日本橋動物病院だより

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水天宮

昨日、7日まで初詣の参拝で多くの方が並んでいらした水天宮でしたが、今朝はいつものとおりに安産祈願の方々も多く並んでいらっしゃいますね。

案内板がそのように変わっていましたよ。

今年の手術は臍(さい)ヘルニアの整復手術でした。
シーズーちゃんに非常に多いものなのですが、見た目はデベソです。
オヘソが膨らんでみえます。
これはお腹に開いた小さな穴から、お腹の中のものが少しだけでてきている状態です。
お腹の中のものというのは、ほとんど場合は脂肪や腸を包んでいる膜などです。
その膨らみ(デベソ)を指でそっとクルクルと撫でると出ていたものはお腹の中に戻りますので、一時的に正常な状態になります。
しかし、何かの拍子にお腹に力が入ると、また出てきて、デベソになってしまいます。

飼い主さんはこのことをよくご存じで、特別なご心配はされていませんでした。
僕も、すぐに手術が必要と言うことはないと判断しましたが、男の子、ちょうど去勢術をする時期になりましたので、今回は去勢手術と同時にオヘソも治そうとお考えでした。

いつも笑顔の飼い主さんは、この日も笑顔でワンコをお連れになりました。
飼い主さんのお家には多くのワンコがいまして、手術を含め、多くの体験をお持ちです。
今回も臍ヘルニアのことはよくご存じでした。

当院では麻酔前に必要な血液検査を行っています。
まずは全体の様子を確認する身体検査(内科学的な検診)をしたあとに血液の検査をして麻酔をかけるにあたり問題がなければ手術に進みます。

点滴をつなぐために細くて短い管を血管に入れ、ゆっくりと点滴を流しはじめ、そこにまずは麻酔前のお薬を注射します。
ゆっくりと様子を見ながら薬を入れていき、力が抜けてきたところで止めます。
体重によって使う薬の目安があるのですが、この目安だけを考えて使うことは通常はしません。
どうぶつのその日の体調や薬に対する反応はそれぞれに違うと考えますから、かなり慎重に行うところです。

余談ですが、当院では開院からこれまでの間、そして私の体験的にはその前もふくめて、獣医師になってからこれまで麻酔による事故、問題は幸いなことに体験したことがありません。
おそらくは今後もこの方法で麻酔をかける限り、問題は起こらないと考えていますが、楽観的な考えは危険ですので、毎回慎重に行っているところです。

酸素のマスクをして、麻酔のガスをゆっくりと流しはじめ、反応が弱くなったところで呼吸を補助するチューブをのどにあてます。
これで呼吸を管理しやすくなります。

そのまままずは臍ヘルニアの手術をします。
皮膚を切開して飛び出したものを確認します。
小さな穴の縁にこの飛び出している膜がくっついています。
癒着しているものをそっとはがして、再び正しいところへ戻します。
あとは開いている穴をきれいにして縫って閉じます。
手技はとても単純です。

次に去勢手術をして終わりです。
この子はとても人なつっこい子で、手術が終わり、だいたい1分以内には目も覚めて、ますで何事もなかったかのように元気でした。
しばらく観察をして、食べ物を与えてもよい頃になりましたら、まずは少しだけ食事を用意しました。それをすぐに完食!
手術の日は朝に食事を食べないで来て頂いております。
お腹が空いているのは当然のこと。
その後にもう少し食事を追加して、それもしっかりと食べて。

夕方まで麻酔後の観察をしてお迎えを待ちました。
飼い主さんは笑顔で、ワンコも精一杯尻尾を振っての再会です。

次は抜糸までおおよそ10日間。
治療後はエリザベスカラーも、包帯も必要なさそうです。
オヘソもすっきりとしましよ。