日本橋動物病院だより

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アジソン病(副腎皮質機能低下症)

新しい年が明けました。
元日夜8時過ぎに電話があり、生後3カ月のチワワちゃんの飼い主さんが診察をご希望されました。
通常、初診の時間外診療はお断りしておりますが、1月1日です、行かれるところがなくてお困りだろうと診察させていただきました。
チワワちゃんはぐったりとして、立つことはもちろんのこと、動くこともほとんどできません。
「低血糖でしょうか?」
飼い主さんが言われました。
確かにこの月齢の小さな子達はよく低血糖になります。
しかし、この子は飼われて3週間以上が経っています。
低血糖は飼われたすぐくらいに起こることが多いことを考えますと、他の可能性も考えなければなりません。
まずは血液検査です。
検査を始める前に発作があり、20-30秒くらいの痙攣が起きました。
すぐに採血をして、直後にブドウ糖を飲ませました。
しかしなかなか飲み込めません。
低血糖でも重度だと痙攣が起きますし、またブドウ糖を口から飲ませようとしても飲み込むことができないこともあります。
このような場合は静脈注射が必要です。
血液検査の結果をみると、異常値が並んでいました。
電解質異常(Na119、Cl69、K6.5)があり、低血糖があり、血中尿素窒素の上昇(BUN>130)があり、肝酵素も高くなっていました。
・・・どう考えても単なる低血糖ではなく、アジソン病と仮診断しました。
ステロイドはいつも悪者に考えられがちですが、アジソン病は体の中にステロイドが足りなくなって起こる病気です。
すぐに静脈点滴を始め、ステロイドの静脈注射と、飲み薬を飲ませました。
アジソン病の確定診断のための検査がありますが、今回はかなり乱暴ですが省略です。
1月1日ですから、どこも検査センターが動いていません。
かと言って、確定診断の検査結果を待ってから治療を始めることは出来ない状況です。
通常は確定診断の検査を行ってから治療をしなければなりません。
去年、寂しいお別れがありました。
長年通われたアジソン病の友達(ワンコ♀)がいました。
いろいろなことがありましたが、いつもは状態は落ち着いていて、とてもとてもかわいい友達です。
12歳の誕生日を祝ってもらうと間もなく旅立ちました。
この友達にはいろいろと教わりました。
アジソン病はそう多くみる病気ではありません。
かなりめずらしいと同時に、診断が難しい病気でもあります。
血液検査で異常であることは誰でもすぐにわかりますが、それがアジソン病だとわかるにはさらに検討が必要です。
僕はその友達にお別れまでの7年間に多くを教えられ、アジソン病については特別な思い入れがあります。
今回も来院から診断まで20分程度、早くに治療を始めることができたのは、その友達のお陰です。
今朝のチワワちゃんの元気な姿はとても嬉しいものでした。
まだまだ油断はできませんが、部屋の前に行くと尻尾を振りながら喜んでくれます。
昨日の立てない姿とは大違いです。
この時点で仮診断したアジソン病はほぼ間違いなさそうです。
その治療しかしていませんし、劇的な回復ぶりですから。
年始め、友達にとても感謝しています。