日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

パルボウイルス感染症という病気

寒くなったので、上着がパーカーだけでは限界になってきました。
今日は日陰ができるくらいの日光は見られないのかも知れませんね。

ちょっと残念ですが、明日の予報は晴れなので期待しています。

先日はじめて来院された仔犬がいます。
はじめて犬を飼うご夫婦がお連れになりました。
かかりつけの動物病院で2日前に予防接種を受けてから体調が悪くなり、
2日目になってもよくならないので治療を受けていらっしゃいます。
夜になっても改善がないとのことでしたが、かかりつけはその日午前中だけの診療。
そこで当院に来院されました。

症状は嘔吐、下痢、そして食欲不振です。
しかも嘔吐が結構続きます。
白血球数や血糖値を調べるために血液の検査をしました。

飼主さんは飼い始めてまだ10日ほどの仔犬ちゃんがなかなか元気にならないので、とても心配をされています。
採血と点滴を行い、結果がでるまで少し待っていただきました。

白血球も血糖値も正常値でした。
とりあえずは腸炎の治療をして帰ってもらいましたが、翌日朝早くに再度来院されました。
夜中ずっと吐いていて、おそらくは寝ていないだろうということでした。
診察台の上で横になっています。
仔犬ちゃんが診察台で横になることはまずありません。
重篤な問題があることは明らかでした。
そこで再度同じ検査をすることにしました。

白血球数が900個/ulという結果です。
これは明らかな白血球減少症です。
月齢、飼われてからの時間、ワクチンの接種歴、症状から考えますと、類症鑑別リストに入る病気はかなり限られます。
しかしながら第一候補のパルボウイルス感染症であれば反応するはずの検査にだけ反応がありません。

この検査は症状がみられてから比較的早い段階ではないと反応がありませんし、早すぎても陰性と出ます。
パルボウイルス感染症という病気にかかると白血球数が減ります。
僕のこれまでの体験からは、2000個/ulくらいまでで再度増加に転じてくれれば助かったことがありますが、この子は900個/ul。
この子の場合は前日の検査で白血球数が正常値でした。
これはまだ感染初期の段階だと考えられます。
パルボウイルス感染症を仮定した場合ではありますが。

それが一気に900個/ulまで減るのはあまり見たことがありません。
そこまで白血球が減って回復した子をみたことがありません。

この子の病気の確定はできませんが、パルボウイルス感染症として治療する以外はなさそうです。
月齢によっては致死率の高い最悪の病気ですが、それを想定して治療をすすめることにしました。

感染症には感染源があります。
どこで感染をしたかということです。
この病気は感染してから症状が現れるまで5-10日ほどの時間がかかります。
飼主さんが飼われる前に感染したことも考えられますし、飼われてから感染したことも考えられますし。

ワクチンの影響も全くないとは言えないところです。
ワクチンはウイルス弱らせて病気が発症しないくらいにしたものです。
それが発症することは理論上はありません。
この仔犬ちゃんが受けたワクチンは当院で使用しているものではありませんが、調べてみると死亡例があることも知ることができます。

先輩獣医師に聞いてみましたら、その先生のところでは3匹くらいの子が同じようなことになったとのことでした。

ロンドンの友人(獣医師)に聞いてみますと、そこではまずワクチンによる発症は見たことがないという返事でした。
そうかどうかを調べる方法はあるけれども、なかなか難しいものです。

未だ飼われる前に感染をしていたのか、ワクチンで引き起こされたのかは不明ですが、何よりこの子はこのとても小さな体で頑張っています。
最近はなかなかみかけることがなかった病気ですが、やはり注意しておかなければならない病気であることは間違いなさそうです。

予防は、ワクチン接種、かならず有効と言える治療はありません。