日本橋動物病院だより

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目が赤い子 -進行性網膜萎縮症(PRA)-

12月になりました。
今年も残すところあと1か月。
年越しは穏やかにできますように。

先日来院されたダックスちゃんの目が赤いことが気になりました。
見えているのかな?
そんな心配があり、目を検査してみました。
散瞳剤という、瞳孔を開くための目薬を点眼します。
その後、お薬が効くまで少しの間待ってから専用の器具を使って目の底、いわゆる眼底検査を行いました。

このような場合、飼主さんがワンちゃんの視覚が弱い事に気づかれている事は少ない事です。
特にお家の中でいつもどおりに過ごしている場合、気づく事はできませんし、さらには、検査して見えていない、すなわち失明が決定的であっても、 "いや、見えている”と思われる事は多い事です。

このダックスちゃんの飼主さんは、何だかおかしな様子が少しずつ気になってはいらっしゃいました。 

若いご夫婦ですが、心配そうにお話をされながら目薬で瞳孔が開くまでの時間をお待ちになっていらっしゃいました。

おおよそ20-30分ほどして眼底を検査してみました。
眼の底にある血管を評価します。
残念ながら、血管が細くなっているところ、そして周囲では血管が見えなくなっているところがあります。

通常は視神経乳頭と呼ばれる白い小さな点のところから血管が放射状に伸びているのですが、ときにその血管が全くみられなくなることがあります。
このような場合、ワンちゃんは視覚を失っています。
進行性網膜萎縮症もそのような病気のひとつです。

進行性網膜萎縮症になりやすい犬種は多いのですが、やはりダックスとプードルちゃんは多いですね。

この子は今はまだどうにか見えていますが、今後見えなくなって行くことが予想されます。
進行する病気で、くい止める事はできません。

飼主さんはある程度予想されていた結果を静かに受け止めていらっしゃいました。
何かできることはありませんか。
このような場合には、まずはこの病気の今後の流れをお話しするようにしています。

進行性網膜萎縮症が起こると、次には必ず白内障が起こり、白内障が起こると次ぎにはぶどう膜炎が起こり、そして最終的には緑内障へと発展します。
このどこかの段階で寿命を迎える子もいます。

この進行を止めることはできなくても、遅らせるようにサプリメントをおすすめしています。

定期的に眼の診察をしながら、白内障へ進行していってはいないか、視覚はまだ保たれているのかなどを見ていくことになりました。

できるだけ長くそのかわいい目でみられますように願いを込めて。