日本橋動物病院だより

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猫ちゃんの両腕骨折 -開放骨折、ALPS (アルプス) 使用-

連日の"今年一番の寒さ"更新ですね。

寒くなるのは当然のこととしまして、少しゆっくりと気温が下がってくれるとよいのですが、思うようにならないのが自然の常でしょうか。

その診察ははじめはお電話のお問い合わせからでした。
猫ちゃんがマンションのベランダから落下、外に飛び出したのではなく、ベランダにある小さな穴から数階下まで落下したようでした。

まずは近くの動物病院(1件目)へ行かれ、次にその動物病院では対応が困難ということで、骨折治療などで有名な動物病院(2件目)を紹介され、現在はそこに入院中とのことでした。手術が必要なことは明らかですが、いろいろな面でもう少し情報を必要とされていました。

当院にお電話をくださったのは、いわゆるセカンドオピニオンです。
入院中の2件目の動物病院の先生から、紹介というわけではないのですが、セカンドオピニオンであればと、うちの動物病院(3件目)の名前も挙げられたということでした。

飼い主さんがとても心配されていたのは、猫ちゃんの入院環境のこと、手術方法について、入院期間について、そして費用についてでした。

お電話でいろいろとご相談しまして、最終的には実際に診察をしないとわからないことがありましたので、そうお話しますと、すぐに転院して来られました。
2件目の動物病院の先生とはよいお付き合いをさせていただいておりますので、早速お電話でこの猫ちゃんの入院中の治療内容を伺って、転院手続きが完了しました。

あとはうちの動物病院で手術を行うことになりました。
飼い主さんは、普段動物病院では不安そうだったり、暴れてしまったりする猫ちゃんがうちだととても安心しているようだと、そこが一番うれしいことだと、そうお話くださいました。

入院はどのようなお部屋でするのかをご質問されましたので、入院室を見学していただき、手術の内容を含め、できる限りいろいろな質問にお答えし、そのほかにこちらからも必要なお話をさせていただきました。

猫ちゃんは両腕を骨折しています。
そして、骨折した後でも歩いておうちまで帰って来たとのことで、折れた骨が一度皮膚を突き抜けて飛び出していました。
これは開放骨折と呼ばれるもので、緊急に手術が必要ですし、ときに治らないことや、治るにも通常の解放ではない骨折と比べまして時間がかかることもあります。
それが両腕ともです。

このような腕の骨折にはプレートと呼ばれる金属製の薄い板を使って治療します。
プレートには大きく分けますと2つの種類があり、通常のプレートとロッキングプレートというものです。

違いの詳細はこの記事では控えますが、僕はロッキングプレートを好んで使っています。やはり治りが早い印象がありますし、世界的にも整形外科ではロッキングプレートが主流になってきています。

そしてロッキングプレートにもいくつかの種類がありまして、今回はALPS(アルプス)というものを使うことにしました。
スイスのKYON(キヨン)という会社の製品です。

このような落下で骨折まで起こった場合には、通常は肝臓など体の中にも何かしらの変化が起こっていることがあります。しかしながらこの猫ちゃんは体調的には落ち着いていましたから、すぐに手術を始めることができました。 

両腕の骨折手術には時間がかかります。
しかも今回は開放骨折。
慎重に、でもできるだけ早くに手技を進めていかなければなりません。

血管から点滴をはじめ、麻酔をかけて手術開始です。
看護師達も慣れていますし事前の打ち合わせもありますから、手術がはじまりますとほとんど言葉を使うところはなく、どんどん手術が進んでいきます。

片方の腕が終わり、次の腕も。
終わった報告を飼い主さんにしますと、早めにご面会に来られました。
猫ちゃんはその頃にはすっかりと麻酔からもさめていて、飼い主さんを心配させることはありませんでした。
少しの間入院しましたが、飼い主さんは毎日ご面会に来られ、元気で食欲も旺盛な猫ちゃんにすっかりと安心されているようでした。

骨折の手術で執刀医の胃を痛めることは、しっかりと治るかどうかがすぐにはわからないことです。
やるべき手術をきっちりとやり、あとは定期的に経過観察をしながら問題が起これば手を加える。これしかないところです。

やはり通常の骨折とは違いますから治りまでの時間はややかかりましたが、次第にしっかりとした骨ができてきまして、今ではテーブルからのジャンプもできるようになりました。

次の検診を一応最後にする予定です。
飼い主さんがとても心配そうなお顔だったのは初日くらいで、後は毎回来院されるときは笑顔だったのが印象的です。