日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

整形外科手術が続きますね

花粉症の季節ですね。診察室に入ってくるワンコさん達にも花粉がついているようで、診察台に上がると反応してくしゃみが出てしますよ。あと1か月はこんな感じでしょうね。

整形外科の手術が続きます。

水曜日 膝蓋骨脱臼の整復手術
木曜日 大腿骨の骨幹、骨頚、骨折の整復手術
金曜日 橈尺骨骨折の整復手術
火曜日 前十字靭帯断裂の手術、大腿骨頭切除手術

整形外科の手術は、使う器械も多くなりますから、術前計画に基づく、器械やインプラントの選択、そして滅菌、使用後の洗浄、片付けが毎日続きます。

手術の成功は術前計画にかかっています。

計画通りにならないこともりますが、計画がないとやってはいけない手術だと思います。整形外科の手術は、工作に似ています。
芸術作品を作る感じもありますが、どちらかと言いますと、指示書どおりに組み立てて行く感じです。

今回の手術はどれもいわゆる怪我のようなものです。

細かく言いますと、変性症(前十字靭帯断裂)ですとか、遺伝的なもの(膝蓋骨脱臼)ですとか、ありますが、突然のできごとで起こります。
ワンコ達はそれぞれの部位に強い痛みがありますし、おうちの方は、いずれも心を痛めていらっしゃいます。

金曜日の橈尺骨骨折の子のことです。

とても骨折の多い犬種です。
急患としてお電話をいただき、すぐに来院していただきました。
初診の方でしたが、お友達からうちの動物病院をご紹介されたとのことでした。
来院されたときは、骨折した腕に割り箸で添え木をしてあり、タオルと薄手の段ボールが巻かれていました。

レントゲン検査で骨折の様子を見てみますと、肘から手首の間の骨が骨折していました。
「橈尺骨骨幹遠位1/4の単純横骨折」というものです。
そして、通常はどのように元どおりに戻すかという手術計画に用いる、折れていない方の腕のレントゲン写真を見ますと、しっかりとしたプレートが入っていました。

反対側の腕もかつて骨折をして、手術を受けたということです。
しかも、このプレートは少し特殊です。

ALPS(アルプス:Advanced Locking Plate System KYON社)でした。

このプレートを使う獣医師は少ないはずです。
スイスの会社の物で、トレーニングを受けるには、アメリカに行く必要があります。
手術を受けられたのが、およそ7年前ということですから、購入もアメリカに行かなければならなかった時です。

あまり他の動物病院のお話を聞くことはしないのですが、「どちらの動物病院で手術されましたか?」かなり興味がありました。

お話を聞きますと、この子は生後半年ほどのときに、今回とは反対側の橈尺骨骨折をしてしまい、はじめに創外固定という方法で手術を受けたそうです。
創外固定法をこの腕に使うことは、あまりありません。手術法の選択としては珍しいものです。
創外固定という方法ですと、骨折が治った後で手術で骨に入れたインプラントを抜く必要があります。

生後半年程での骨折、やっと治ってこれから自由に動けるという、このインプラントを抜く手術で、はじめに折れて治ったところではないインプラントがあったところが骨折したそうです。
そこからまた強固なプレート固定をして。
そのときに選択されたのがALPSだったようです。
創外固定のピンを抜く手術で起こった骨折の治療に用いられました。
うちにはALPSをはじめ、いくつかの骨折治療用のプレートがあります。

今回もALPSにしようか考えましたが、MatrixMandible(通称、マトリックス)というプレートを選択しました。

今回の骨折はなぜ起こったのか?
大切なことをまだ聞けていませんでした。
先ほどグルーミングサロンに行きました。
爪を切っていただきたくて。
そのときに、グルーミング台から飛び降りてしまって。
…。
爪切りに行ったサロンでの事故でした。
お母さんはとても辛そうでしたが、そのお話を聞きますと、僕たちも一段と辛くなりました。

早く歩けるようにしなければ。
とにかく1日でも早くに。
手術計画を立てて、使うインプラントを決定し、使うスクリューも揃えました。

おおよそ1時間ほどの手術でした。
ほぼ計画のとおりに終わりましたが、ひとつ想定外だったのは、出血がひどかったことです。
皮膚の下で起こっている出血は、内出血として外からわかる場合もありますが、わかり難いこともあります。
さらには、皮膚にメスを入れますと、ツーッと血液が流れ出てきます。
普段よりもずっと多い量です。
慎重に止血をしながら手術を進めました。

少しばかり入院が必要です。
手術が終わった夜にはご面会に来られ、またいろいろとお話を伺いました。
普段行かれている動物病院のこと、小さい頃にはじめの手術をうけられたときのこと、歯磨きを上手にさせてくれること。

手術は思うようにできました。
骨折の手術である程度起こるズレも1mm 以下か、おそらくゼロです。
走り回るための準備は整いつつあります。

あとは必要な時間が過ぎるだけです。
お花見の頃には走れますね。