日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

単純な膀胱炎かと思っていたら

明日は節分ですね。
近くの水天宮では豆まきの行事があるようです。
歩いてすぐですし、時間が取れたならば皆で行ってみたいところです。

膀胱炎だろうかと、尿が赤いということでワンコが来院しました。
よく診てみますと、確かに真っ赤な尿が出ています。
しっかりと検査をするためと、膀胱を洗浄しなければならないくらいに細菌尿のニオイがするので、膀胱にカテーテルという細い管を入れようとしました。

ところが、管は途中まで進んで入って行きません。
詰まっている様子もないためにいろいろと調べてみますと、お尻にやや不自然な膨らみを発見しました。

普通はトイレに行ってもちゃんと出ないとか、出辛そうにするとかの何かしらの症状を伴うところですが、このワンコは以前に他の動物病院で椎間板ヘルニアの手術を受けてはいますが、後ろ足が麻痺したままです。
オシッコはいつもトイレで決まったタイミングではなく、自然に漏れ出てくるといった具合です。

お尻の膨らみはいわゆる脱腸と言われますが、会陰ヘルニアと呼ばれるものでした。
肛門の横の筋肉に裂け目ができて、そこから腸や脂肪や膀胱等が飛び出してくる病気です。

このワンコの場合は肛門の右側から膀胱が飛び出していますが、調べてみますと左側からは腸が飛び出しています。
左右ともに脱腸だったわけです。

しかも排便困難や排尿困難といった症状が椎間板ヘルニアによる下半身麻痺の影響でわからなくなっているというものでした。

いろいろと困難なことがあります。
椎間板ヘルニアによる麻痺が下半身に残ると、まず問題になることは排尿困難に続く膀胱炎です。
ほとんどは慢性膀胱炎になります。
これはヒトでもそのようで、ときに膀胱に入り込んでしまった細菌の影響で命に係ることにも発展するとのことです。

このワンコは会陰ヘルニア(いわゆる脱腸)が改善しても下半身麻痺があるために膀胱炎リスクは解消されません。
かと言って、このままでは膀胱炎は悪化します。

手術をすることで、膀胱炎にはなり難くはなりますし、オシッコもこれまでよりは出やすくなります。
完全解決するわけではなりませんが、手術は必須だと考えました。

飼主さんはとてもお仕事がお忙しい方ですが、せっせとこのワンコのお世話をされていました。
そこにこの問題です。

手術をお願いします。
詳しく様子をお話しましたら、ほぼ即決でした。

来院されたときは、ワンコは元気もなく、食欲もなく、真っ赤なオシッコを漏らしていて。そのような様子でした。

できるだけ膀胱炎の治療をしてから手術にのぞみました。
慢性的にヘルニア(脱腸)が起こっていたと考えられます。
このような場合には、飛び出している膀胱や腸や脂肪などはまわりの組織に癒着していることがあります。
慎重に癒着をはがしながら、出血を最小限に抑えながら手術をすすめました。

この病気はとても再発しやすいものです。
そのために2回以上手術を受けなければならない子も多くいるようです。
幸いにそのような経験はありませんが、この子も1回だけになりますようにといろいろと自分なりに工夫しながら行いました。

無事に手術が終わり、もうその場から手伝わなくてもしっかりとオシッコができるようになりました。とは言いましても、意識的にやっているというよりはむしろ漏れ出てくるというものですが、それだけでもかなり膀胱炎リスクは減ったと考えています。

他の動物病院で行われた椎間板ヘルニアの手術では相当な出費があったようです。
また手術かーと、ため息されていましたが、退院の時には笑顔でこれまでのことをふくめていろいろなお話を聞かせていただきました。

ワンコも来院したときとは違う、イキイキとした目でとても元気になって退院しました。
飼主さんも笑顔でした。

次に来られるときは抜糸です。
あと1週間後、またさらに元気な姿に会えますように。