日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

去勢手術

今月は男の子のワンちゃんに去勢手術をすることが多くありました。
去勢手術はおそらくはどこの動物病院でも日常の手術ですからめずらしいことではありませんし、当院でも然りです。
しかしながら、今回は特別です。
行った去勢手術の対象は中〜高齢のワンちゃんで、治療目的のものです。
全てが、いわゆる去勢手術ではありますが、若い子に行うものとは目的が異なります。
病気の治療の目的で行いました。
どのような治療目的で、いわゆる去勢手術が必要かといいますと・・。
1 精巣にできた腫瘍
2 前立腺肥大(前立腺過形成)
3 肛門周囲腺腫
精巣の腫瘍に対しては、摘出ができるのであれば行うのが最良です。
多くの場合の症状は、左右の精巣の大きさに違いがあることです。
これは見た目で判断したり、触って確認します。
健康面では無症状のことが多いと思います。
飼い主さんが左右の大きさが違う!と発見され、ご連絡を受けました。
高齢のワンちゃんですが、見た目が若々しく、とてもきれいにお手入れされている大型犬です。
手術は日帰りで行い、夕方には当院の近くを軽く散歩してお帰りになりましたよ
前立腺肥大(前立腺過形成)は加齢性の変化です。
症状は排尿、排便困難です。
前立腺が肥大して、尿道や大腸を圧迫するようになりますと、排尿や排便が困難になります。
一人の飼い主さんは、高齢で足下がおぼつかないけれども、お散歩が大好きな子の排尿困難に悩んでいらっしゃいました。
若い頃は体重が50kgを超えていましたが、今ではそれほどではありません。
それでもゆっくりゆっくりではありますが、お散歩が大好で、これから春に向かうので、もっともっとお散歩を楽しみたいとのことでした。
尿道からカテーテルと呼ばれる管を入れて排尿を促していましたが、毎日のことですから、手術をして治療をする方法を選ばれました。
同様に日帰り手術。
11時に来院され、3時にはお迎えでしたよ。
もう一人はダックスちゃんの飼い主さん。
高齢ではありますが、とても元気です。
この子は、排尿困難だけではなく、排便困難もありました。
触診、レントゲン検査、そして超音波検査などで前立腺の肥大の程度を調べました。
昨日手術をしました。
日帰りでお帰りの後にいつもはチョロチョロとしか出ないオシッコがたくさん出たと喜んでお知らせ頂きました。
・・しかしながら、それほどの即効性はありません。
去勢手術を行いますと、前立腺は数日内に小さくなり始めます。
それよって排尿や排便が楽になっていきます。
・・おそらくは点滴をしたので、尿量が増えたせいかもしれませんよ。
そのようにお応えしましたが、飼い主さんは高齢のワンちゃんの手術にとても心配されていましたので、元気な術後をご覧になり、とても安心されていました。
最後のワンちゃんはお尻にデキモノができたとのことでした。
針で突いて調べてみますと、「肛門周囲腺腫」とよばれる腫瘍であることがわかりました。
この腫瘍には良性と悪性がありますが、多くが良性です。
しかしながら、針で突く検査(生検)だけでは良性、悪性の確定診断はできません。
良性でもどんどんできる場合もありますから、手術で取り除くことが必要です。
そして、この腫瘍の特徴として、男の子のホルモンの影響を受けて大きくなるとされます。
それ故に、去勢手術をすることで今ある腫瘍を小さくしますし、新しい腫瘍ができ難くなります。
この腫瘍の手術をする場合には、治療目的と再発をできる限り防ぐ目的で去勢手術が推奨されます。
どの飼い主さんも元気なワンちゃんをみて笑顔で帰られると、こちらもとても嬉しくなります。
通常の去勢手術とは異なりますので、目的が達成するまで治療が続きますが、それももうちょっとです。