日本橋動物病院だより

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膝のお皿の病気 – 膝蓋骨脱臼 –

6月もそろそろ終わりですね。雨が多いですが、夏日になったり照りつける太陽がまぶしかったり、このまま本格的な夏になったらどうなるのでしょうね

どれくらいの暑さになるのかちょっと心配ですね。

最近、ワンコの膝の手術が続きました。前十字靱帯の断裂や損傷が多いのですが、
その他に膝蓋骨脱臼( しつがいこつだっきゅう)と呼ばれる異常があります。
症状は歩いているときに片足をあげてケンケンしたり、また普通に戻ったり。
ときにはずっとあげたままになったりします。

成長とともに症状が目立つようになることがあります。
中には異常がありながら見た目には何も症状を見せないこともあります。

程度によってグレード1からグレード4までの評価をします。
グレード1が軽い異常でグレード4が重い異常です。
グレード4は手術をしても十分な効果が期待できないもので、通常は手術の対象はグレード3までとされます。

命に関わる問題ではありませんが、若いときの問題は今後障害に渡って付き合わなければならないために、症状が続く場合には早めに手術をすることがあります。

はじめに手術をしたのはパグちゃんでした。
意外にもパグちゃんには膝蓋骨脱臼がよくみられます。

飼い主さんはパグちゃんが足を上げたり下ろしたりを繰り返すことを心配されて来院されました。
診察では膝に異常がみられ、検査をすると膝の靭帯も緩んでいるようです。
このパグちゃんはとてもおとなしくて、パグちゃん特有の何とも言えない愛嬌のある眼をしています。
手術をすると数日は入院管理が必要です。
どの飼い主さんも同じですが、離れるのがとても辛い様子ですが、あまりその気持ちを見せないようにされていました。

手術は全身麻酔で行います。
パグちゃんのような鼻の短いワンコは麻酔に弱いと聞いたのですが、
飼主さんはとても心配そうにお話しされました。
確かにそうですが、慎重に行えばそれほど危険なものではありませんよ。
いつものようにお応えしました。

本来はもっと危険性を強調すべきところでしょうが、慎重に行えば問題がないだろうという健康状態でしたので、できるだけ飼い主さんに心配をかけないようにと思いました。

パグちゃんはとても甘えん坊ですが、この子もとっても甘えん坊です。
飼い主さんが大好きで、もちろん飼い主さんもとてもかわいがっていらっしゃいます。

膝蓋骨脱臼の手術はいつくかの手技を組み合わせて行うもので、簡単な手術ではないとされます。
外科手術には、クッキングブック手術と言われる、いわゆる教科書のような外科手技が書かれているとおりに行えば、それができればという前提ではありますが、ちゃんと成功するというものもあります。
それですら難しいことはあるのですが、この膝蓋骨脱臼の手術はクッキングブック手術ではないものです。

膝の皮膚を切開して、膝をしっかりと観察し、いくつかの最低限行うべき手技を進めます。その後で、さらに追加手技が必要かを検討していきます。
このパグちゃんも内側膝蓋支帯と呼ばれるものを解放したり。ちょっと細かすぎますね

最後に外側縫合と言うのでしょうか、英語ではラテラルスーチャーといいますが、これを行って終了でした。

ちょうど検診に来られましたが、すでにしっかりと歩けるようになっていて、この手術でよく起こる再脱臼もみられませんでした。

飼い主さんも安心していらっしゃって、できるだけ早くにドッグランに行きたい様子でした。
術後最低でも4週間は歩く以上の早さでは足を使わない方がよいために、できるだけの運動制限が必要です。
しかしパグちゃん、そんなに大人しくはできないでしょうから、飼い主さんももうしばらくは大変かも知れません。

もうちゃんと歩けますから、走らせれば走ることもできます。
そこはもう少しの我慢です。

本格的な夏の前に、まだ長めのお散歩ができるところで、思いっきり走ることができるようになりそうです