日本橋動物病院だより

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骨折の手術 - 癒合不全 –

そろそろ関東も梅雨入りでしょうかね。
雨の日が増えていますよね。

最近は、通常の骨折だけではなく、癒合不全の治療も行っています。

ドッグランで骨折をしてしまった小型犬、そして大型犬。どちらもいわゆる通常の骨折です。
ステンレスのロッキングプレート(LCP)というものを入れて固定をしました。
左右にも、上下方向にも1mmのズレもなく、しっかりと固定ができました。強固に固定ができますと、数日の入院後、お家に帰る頃には歩けます。そして、運動制限をしていただくことにはなりますが、多分走れます。

骨折をする子は本来の運動量が多く活発ですから、しばらくの間は運動制限をしていただかないと、僕の方がヒヤヒヤしますが、手術から10日もすると飼主さんもわんこ達も治ったと思われるくらいに普通に歩けます。
先日の大型犬は、手術後の経過観察のときには歩いて来院されました。
一応は、再骨折があるかも知れないとか、プレートが破綻するかも知れないとかのお話をするのですが、難しんですよね、じっとすることが。
結局それでもしっかりと治りますから、まあ、これはこれでいいのかも知れません。幸いにも、まだ厳しい出来事には遭遇せずに済んでおります。

そして癒合不全の子が来院しました。
癒合不全とは、骨折が治ろうとしないことです。
色々と原因がありますが、手術をしていないとか、行われた手技に問題があるとか、動物側に何かしらの治らない要因があるとかなどなどです。

癒合不全の小型のワンコは、当院が3軒目ということでした。
まずは1軒目で手術を受けられ、数か月後に治療終了と言われたところで治っておらず、歩けないままだったので、2軒目の動物病院を受診され、そこで骨折した足を切断しなければならないというお話を聞かれ、どうにかならないかということで当院に来院されました。

癒合不全とは別に、癒合遅延というものがあります。これはこれで問題ですが、ゆっくりとは治癒に向かっているものです。癒合不全は、2軒目の動物病院の先生が話されたような、切断ということも視野に入れないといけないこともあります。

骨折直後のレントゲン検査結果を見せていただきました。4か月以上前のものです。

この小型のワンコは、1本の骨が3つに分かれて骨折していました。
上端、下端、そして真ん中なのですが、初診のときに当院で行なった検査では、その真ん中の骨が見当たりません。
上か下の骨とくっついたのかも知れませんが、それでも長さがたりません。
1回目の手術のときに、取り除かれてしまったのかも知れず、飼い主さんにお尋ねしましたが、当然のことながら確かな情報は得られませんでした。
残っている骨は2つです。真ん中が見えないと言いますか、ありませんので、上と下だけです。
それもくの字に曲がって配列されています。

とても難しい手術であることは明らかです。
骨折の手術で、他の獣医師の判断も聞きたいときには、必ず数名の先生方にコメントをもらいます。これは、海外の専門医の先生方にご指導を受けたときに、日本の先生方は誰にも相談せずに、自分の判断だけで手術をする人が多いけど、できるだけ数名の獣医師の意見を聞くべきだと言われてから実践していることです。

始めにオーストラリアの外科専門医の先生にレントゲン写真を添えてメールをしました。
とても親切な先生で、日本との時差も1時間だからか、すぐに返信をもらうことができました。
彼も色々と手術方法についてコメントしてくれた後で、最終的に切断が必要なことがあるというメールを送ってくれました。
日本の先生も、まずとても慎重に行うべきで、細心の注意が必要だとコメントくださいました。

飼主さんの思いと、3本足で健気に駆け回るワンコをみて、ちゃんと4本足で歩けるようにしようと、色々と手術計画を練りました。
オーストラリアの先生がくれた手術方法は、僕が最も効果的だと考えた方法でしたので、それに決め、手術を始めました。

難しい手術ではありますが、ワンコがとても小さいこともあり、時間はあまりかかりませんでした。

足はしっかりと固定されましたが、今まで地面に付けずにあげっぱなしだったので、筋肉も皮膚も縮んでいました。なかなか伸びませんし、それが故に関節もまっすぐになりません。

骨折から4か月以上の間、このままで過ごしてきた訳ですから、すぐに使うようにはならないでしょう。まあ、ゆっくりと4本足に戻ってくれたら、そう願いながらの退院でした。
すると手術から4週間目の診察のとき、ちょこちょこと手術をした足を使って歩いています。まだほとんどの時間は上げていると言うことでしたが、明るい光が差したようでした。

診察室でも、ちょこちょこと患肢を使って歩いています。術後4週間と言うことを考えますと、まずまずでした。

まだ骨が正しい並びに配列されたというだけで、治っているという訳ではありません。
このまま治らずに、癒合不全のままということも考えられます。
そうなったら、また何か手を打たなければなりません。そしてそれが有効かどうかを判断するには、ある程度の時間が必要です。

診察室の中で、少しだけ足を使って歩いてくれるワンコを見る飼い主さんの笑顔がありました。
まだ安心はできません。飼主さんの今の笑顔は、まだ単なる糠喜びになるかも知れませんから、そのときの僕の心境はやや複雑でした。
やることはやったという自己満足は全く意味を成しません。今はただの途中経過です。大切なのは最終結果だけです。

歩けるようになるまで、しっかりとやらせていただきますよ。