日本橋動物病院だより

日本橋動物病院だより

TTA という手術 -犬の前十字靭帯断裂-

秋晴れですね。

とっても過ごしやすい日になりました。

先月のお休みに行った千葉県鴨川市。
8年ぶりの再開がありまして、とても楽しい時間を過ごしました。
その中で、「先生、診て欲しい犬がいるんですよー」と言われ、小さなぶどう園に連れて行ってもらいました。
そこは、車で着替えた水着の人たちが海へと向かう道のそばで、植え込みで砂浜は見えませんが波の音が聞こえるぶどう園でした。
そこに、僕のその恩人がぶどう作りを教えているという日焼けしたお父さんがいまして、その横に太っちょの大型犬がいました。

太っちょのワンコはケンケンして歩いています。
後ろ足に問題があることは確かで、そこを診て欲しいとのことでした。
近くの動物病院に行って股関節がおかしいと言われ、手術を勧められているようです。

触診をすると膝に問題があることがわかりました。
結構重度です。
間違いなく前十字靭帯に問題が起こっています。
おそらくは前十字靭帯が切れています。

「前の先生はレントゲン撮ったら股関節がおかしいから手術しておかしくなっている骨を切るって言うんだよね。」
そうお話になりました。
おそらくは股関節形成不全という診断で、大腿骨頭切除(FHO)をするということなのでしょう。
それは危険なことだと思いました。

この大型犬は股関節形成不全が多いことで有名です。
レントゲン検査をされてほお話ですから、それ自体は間違いではないでしょう。
ただ、股関節がおかしいからと言って、ケンケンする原因とは限りません。

股関節はレントゲンですぐに異常がわかるところです。
正常な場合と形が違いますからわかりやすいんです。
前十字靭帯はレントゲンで診断するにはある程度の知識やコツが必要です。

どちらもわかった上で股関節だとなれば問題がないのですが、前十字靭帯の評価ができていないなかで、わかりやすい股関節だけを注目するのは問題があると考えました。

股関節の手術をしても、このケンケンは治らないと判断しました。

膝ですよ。ほぼ間違いないです。
海辺のぶどう畑でじっくりと触らせてもらって、そう判断しました。
そして、ビニルハウスの低木に実っているブドウをいただきました。
甘いブドウでびっくりしました。

水道がここまで来ていないから、ぶどうは洗えないよ。
キョロキョロする僕にお父さんはそう言って笑っています。

ぶどう園のお父さんは都内にお家があります。
鴨川のお家はいわゆる週末を過ごす所です。
動物病院はどこにあるの?
中央区です。

そのようなお話から、近いうちに診察に来られることになりました。
レントゲン検査を再度行って、確かに股関節に問題があることと、やはりケンケンする原因は前十字靭帯であることがわかりました。

ワンコは体重が40kgあります。
前十字靭帯の断裂に用いる手術方法にはだいたい3通りのものはあります。
関節外法、TTA、TPLOです。

世界中で最もよく行われているのは関節外法です。
僕も好んで行います。
今回は体重がありすぎますので、関節外法ではしっかりと治せるか不安がありました。

選んだのはTTAです。
膝から下のいわゆるスネの骨を切って行う手術です。
しっかりとトレーニングを積んでいないとまずやらないと思いますし、ミリメートル単位の緻密な術前計画が必要です。

診察から2週間ほどのところで、手術の日を迎えました。
お父さんは、他の先生が言った股関節という話より、僕の話を聞き入れてくれました。
よし、手術してくれ!
そう言って任せていただけました。

手術方法で相談に乗っていただく先生が鎌倉にあります。
細かな所での相談をしたところ、時間作れるから一緒にやりましょう。
そう言ってもらいまして、二人でやることになりました。

TTA(KYON社)の国際的な講師陣がいます。
この先生はたった2名しかいない日本人講師の一人です。
いろいろと細かなところでテクニックを見せていただきながら、順調に手術が進みました。

術後3日もするとほぼ普通に歩けるようになりました。
完全に良くなるまでにはもう少し時間がかかると思いますが、1週間後にはかるく走れるようにまで回復していました。
(まだ走らない方がよいのですが、ごはんが入ったすばらしい香りを放つ食器を見つけて走ってしまいました。)

TTAはおそらく日本では講習を受けることはできません。
海外でトレーニングを受けた獣医師しかできないものだと思います。
特に大型犬には有効です。
手術をしてから歩けるようになるまでがかなり早いのです。

またぶどう畑を走り回れる日が来ます。
その前に体重を落として欲しいところですが。
今後の回復が楽しみです。