日本橋動物病院だより

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ガラパゴス化?

羽田からロサンゼルスに到着した時は雨でした。
地中海気候で雨とは無縁かと勝手に思い込んでいましたが違うんですね。
ラスベガスでもまだよい天気は見ていません。
東京はよいお天気と聞きました。

今回の渡米では2つの外科コースに参加します。
ひとつは小型犬と猫の整形外科として、骨折や膝の関節に起こる問題を手術で治療する方法がテーマです。
もうひとつは獣医領域の神経外科ですが、いわゆる背骨の骨折や脱臼を取り扱います。

それぞれが2日ずつあります。
計4日間のコースですが、間に2日間も何もない時間があります。
どちらのコースも実際に手術を行います。
話を聞いて手を動かしてを繰り返します。

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今回はほとんどがアメリカ人で時にカナダから、そして香港からも来られていました。
いつものことながら日本人は僕だけです。

実際に手術を行ってみると、いろいろと違いがありますが、だいたい似たようなスキルの方が多いなかで、多くの獣医師が実際にはあまりこの種類の手術を行っていないのかも知れないと思いました。

海外のコースに参加するといろいろなことを思います。

日本とアメリカを始めとする海外の獣医師との違いです。
海外には専門医という方々がいます。
外科には外科の専門医がいます。
日本には専門医制度がありません。

どのような違いが出てくるかといいますと、例えば海外では椎間板ヘルニアの手術が必要であれば、それは専門医の仕事です。
専門医ではない獣医師は一般診療の獣医師と言われ、ジェネラルと呼ばれています。
このジェネラルが椎間板ヘルニアの手術をすることはないようです。
必ず専門医が行うようです。

しかし日本では専門医がいないために、椎間板ヘルニアの手術が必要な時に実際に行うのはジェネラルです。それはジェネラルしかいないから。
しかし、全ての獣医師がこの手術ができるかと言いますと、答えはNoです。

海外ではジェエネラルが手を出さずに、専門医が行う手術ですから、日本の獣医師の誰もができるということはありません。
当然ながら、日本で椎間板ヘルニアの手術を行う獣医師は少ないのが実情です。

海外で専門医になるのは、その国に住んでいる獣医師にも難しいものです。
誰でもすぐになれるものではありません。
つまりは椎間板ヘルニアの手術を行うためにはジェネラルよりも長い間のトレーニングが必要になります。

日本では基本的には獣医師免許というところで見ますとみんな同等です。
あとは自身でやれるようになるかどうかです。
そのようなことで、僕のような者でも手術を行いますし、海外であれば歯科の専門医が行うであろう治療も行ったり、眼科の専門医が行うようなことも範疇に入ってきます。

専門医の制度がないことで、実際に精力的に行動すればできることを増やすことができるということです。

この辺りはガラパゴス化と表現してよいのかどうかですが、他国から孤立した体系が存在するような気がします。

時々、日本の獣医師と海外の獣医師とのレベルはどちらが上ですか?と聞かれることがあります。
これは簡単な回答はありません。

日本にはジェネラルしかいませんから、海外の神経外科の専門獣医師群と日本のジェネラルで神経外科を行っている獣医師群とを比べると、海外の獣医師群の方が腕はあると思います。
しかし、海外のジェネラルで神経外科を行っている獣医師はいないはずですから、そことの比較では日本の方が断然上だと思います。

もちろん群ではなく個別に見た場合、神経外科の手術で海外の神経外科専門医と同等かもしかしたらそれ以上の日本の獣医師もいます。

そのような環境の違いを知るにつけ、日本でやっていて良かったと思います し、これからも精力的にできることを増やしたり、能力を高めていく努力を続けていこうと思っています。

僕は整形外科が苦手です。
それが故にもっともっと高いところを目指したいという目標があります。

ずっとずっと勉強が続く世界です。
専門医制度がないことで、広げたい場合には無限にも広がるフィールドがあるようなものです。
僕にとっては、生涯好奇心を保ち続けられる天職なのかも知れません。