日本橋動物病院だより

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噛み合わせ -生活歯髄切断術-

秋も深まり、次第に風が冷たくなってきましたね。
この季節、夏の暑い時期に食欲が低下していた子達が、モリモリと食べるようになる時期でもあります。
ワンちゃん達にとっても過ごしやすくなりました。
最近、歯のことでお問い合わせを頂くことが多くなった気がしています。
他の診察のついでという飼い主様が多いのですが、「歯は大丈夫でしょうか?」と歯石付き具合や歯肉炎を心配されている方が増えています。
まだ若い子で、まだ1歳の誕生日を迎えていない子が来院しました。
本来は抜けているべき乳歯がたくさん残っています。
しかも、よく見てみますと下側から上に向けて生えている犬歯の永久歯が上の歯茎にあたって傷を作っていました。
これは正常な犬歯(永久歯)の位置であれば起こらないことなのですが、乳歯が抜けずに残ってしまっているために、犬歯の永久歯が口の内側に向けて生えてきてしまったためです。
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一番手前の上向きに生えている細い歯が抜け残っている乳歯です。
そしてその1つ奥にあるやや太めの歯が口の内側に生えてきてしまった永久歯です。
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正しくないところに永久歯が生えてしまったために、その永久歯があたるところに傷ができています。
このままですと、この傷が今よりも悪化するのは時間の問題です。
このような場合、選択できる解決策は歯科矯正をするか、この歯を短く切って上にあたらないようにすることです。
飼い主さんは切って短くする方法を選ばれました。
歯科矯正はヒトの歯科矯正よりはずっと短い時間に終了するのですが、その間はいろいろと管理をしなければならない大変なことが多くあります。
歯を切るのは器械があれば簡単ですが、それだけでは終わりません。
歯の中には血管が通っている髄があります。
これが露出してままですと感染が起こり問題になることがあります。
生きた髄を切断することを生活歯髄切断術といい、必ず適切な処置をしなければなりません。
器械で歯をカットします。
切断面に詰め物をするための小さな穴を開けます。
止血をしたり感染を防ぐための粉薬を少しつけたり、などなど。
小さな行程をちょこちょこと進めていきまして、最後にレジンと呼ばれる素材で断面を覆います。
うちでは光重合型コンポジットレジンと呼ばれるものを使っています。
ヒトで小さな虫歯を治療するときにもよく使われる物です。
そして仕上がりはこのようになりました。
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手前にあった乳歯は抜歯してあります。
まだ乳歯を抜いた穴があいたままですので、ここを細い糸で縫い合わせます。
しばらくして再度診察をさせていただきました。
傷も治っていましたし、カットした歯も問題ありませんでした。
歯科処置は好きな処置です。
きれいな歯をみることは気持ちのよいものですね。