日本橋動物病院だより

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会陰ヘルニア

散歩が大好きなワンちゃんですが、便の出が悪く、力むと痛みを訴えるように鳴いてしまいます。
飼い主さんはどのような病気なのかご存じでした。
便秘ではなく、会陰ヘルニアという病気です。
おしりにはいろいろな筋肉がありますが、尾の付け根近くの筋肉が薄くなったり小さくなったりして裂けてしまい、そこからいわゆる脱腸になってしまったものです。
ほとんどが去勢手術を受けていない男の子に起こります。
大腸がその裂け目から飛び出していますから、腸から肛門までが真っ直ぐではありません。
飛び出したところが曲がっています。
それが故に、排便で力をいれると強い痛みがあるようです。
飼い主さんは大変に心を痛めていらっしゃいました。
手術しか治療方法はないことを理解されていて、でも、手で脱腸をもとに戻すとしばらくは調子がよいこともご存じで。
手で戻す場合、痛みはあまりありませんが、また脱腸するのは時間の問題です。
そうなると力む度に痛みがありますし、戻さないと全く便がでません。
手術をしようか、もうちょっとだましだましやってみようかの葛藤があり、結局手術を決断されました。
今回はだましだまし作戦が通用しますので、手術だけが解決策ではありませんが、完治を目指す場合には手術以外にはありません。
膨らんだ脱腸部分を切開しますと、薄くなって縮んだ筋肉が裂けています。
肛門の近くの筋肉の間から脂肪や腸が出ていました。
丁寧に糸をかけて、その裂け目を閉じます。
結構太い血管や大切な神経がありますので、慎重に慎重に手術を進めました。
手術が終わった後は予想よりも元気でしたが、食欲がありません。
どうみても具合が悪そうではなかったので、早めに退院してみることにしました。
早速、他院翌日の来院日、飼い主さんは大変喜んでくださいました。
便もしっかり出て、全く痛そうじゃないの
よかったよかった。
僕もホッとしました。
手術はうまくいっていると思っていましたが、食欲がないことが、単に病院だからか、他に何か問題があるのかわかりませんでした。
かと言って、手術が終わったばかりの子をいろいろと検査をするよりは、元気には違いがないのだから、一度お家に帰ってみる選択をした方がよいだろうと考えました。
結果は早めに退院して正解です。
手術の時に毛を短く刈りました。
お尻だけに毛がありません。
まあ、それもかわいいよ。
楽になってよかったね