日本橋動物病院だより

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この薬は何のお薬?

どうぶつの病気の治療には多くの場合、薬を使います。
自然に治ってしまう場合を除いては、薬を使うことで早く治ったり、薬を使わないと症状を改善できない場合がほとんどです。
お渡しするときに、薬の効果をお伝えするようにしていますが、時々、これは何というお薬ですか?とお尋ねになる飼い主様がいらっしゃいます。
当然のことですが、これはコレコレというお薬ですと回答しています。
このような場合には、その後で、きっとその薬のことを本でお調べになるか、あるいはインターネットでお調べになるか、もしかするとお友達にお尋ねになるかなのだと思います。
エピソードがあります。
ひどい下痢を起こしたワンちゃんが来院されました。
これまでにないひどい症状で、飼い主様は動揺されていました。
検便をすると芽胞菌というグループの細菌が増えていました。
薬を使ってこの芽胞菌の数を減らすことで、かなり早くに下痢が治ります。
早い場合にはその日のうちに治ります。
しかしながら、この薬は強い薬ではありません。
副作用も、飲ませる量を間違わなければまずないと言ってもいいくらいです。
そこでお出しした薬は「メロトニダゾール」というお薬です。
このお薬は、ヒトも使います。
ヒトではトリコモナスの治療に使われます。
性感染症の治療薬でもあります。
当然、このワンちゃんは性感染症ではありません。
メトロニダゾールは、嫌気性細菌とよばれる細菌群と原虫に効くお薬です。
トリコモナスにも、そして、今回検便でみつかった芽胞菌の治療にも使います。
ヒトでは特にトリコモナスのお薬とされていますが、芽胞菌や腸トリコモナスのお薬とは記載はないかもしれませんし、下痢を治す薬としてはあまり使われないでしょう。
飼い主様はお電話で「性感染症の薬がなぜ、うちの子に必要なのか?」という疑問をお話になりました。
当然と言えば当然の質問です。
しかし、下痢なのに性感染症の薬を出されたというご誤解はなかなか解決しません。
性感染症に対する偏見も残念ながらあるわけですから、困ったことになりました。
ヒトの性感染症とワンちゃんに下痢を引き起こす原虫同じお薬で治るというだけのことです。
ワンちゃんにこのメトロニダゾールを使うのは、主に下痢のときです。
・クロストリジウム性食中毒
・形質細胞性胃腸炎
・腸内細菌の異常繁殖
・バランチジウム症
・赤痢アメーバ症
・腸トリコモナス症
・ジアルジア症
などなど、下痢を起こす病気はいろいろとありますが、上に記したものにはメトロニダゾールはよ使われます。
メトロニダゾール単独ではなく、いくつかのお薬を合わせて使うこともよくあります。
お薬情報も途中までの検索ですと不安や心配、そして誤解につながることもあるようです。
これら全てを毎回お話することはなかなか困難ですので、今回はこの場を借りましたよ