日本橋動物病院だより

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エンドトキシン

犬のアレルギー性皮膚炎が増加していることがわかっています。
私の調査では、10匹に1匹以上の割合でみられます。
この調査は3年ほど前のことですので、現在はもう少し増えていると思われます。
ヒトも同様で、急速な増加がみられるために、生活環境の変化が関係するのではないかという考えは以前からありました。
アレルギーとは、通常は反応しなくてもよい物質に対して、過敏に反応して様々な症状を引き起こします。その症状の中で、皮膚に異常が見られるものがアレルギー性皮膚炎です。
このアレルギー性皮膚炎も原因物質によって分類されます。
食べ物を原因とする食物アレルギー、環境抗原を原因とするアトピー性皮膚炎などが代表的です。
これらのアレルギー性皮膚炎は、アレルギー体質であると起こります。
しかしながら、アレルギー体質であれば必ず症状が出るわけではありません。
このアレルギー体質を調べる一つの手段が血液検査です。
抗原特異的IgE抗体検査と呼ばれるものです。
しかしながら、これでIgE抗体値が高いからといって、必ず症状が出るわけではありません。
アレルギー体質にはどのようにしてなるのか。
これが少しずつわかってきています。
小さいときに、エンドトキシンと呼ばれる細菌毒素(弱いもの)に触れる機会が多いほど、アレルギー体質にはなりにくいと考えられるようになりました。
エンドトキシンが多いのは、牛小屋、馬小屋、豚小屋などのいわゆる家畜小屋の中とされます。
空気中におおく存在します。
このエンドトキシンは、細菌毒素のことを意味しますが、ときにこれが原因で病気になることがありますので、エンドトキシンであれば何でも触れればよいというものでもありません。
逆に、エンドトキシンにほとんど触れず、花粉やハウスダストに触れることが多い場合には、アレルギー体質になりやすいと考えられています。
一度アレルギー体質になれば、これは生涯変わることがありません。
犬のアトピー性皮膚炎では、体質改善として減感作療法やインターフェロン療法がなされてきましたが、どれも充分な効果をあげるには至っていません。
体質を変えることはできないのではないかというのが私の考えです。
アレルギーやアトピーに関しては、まだわからないことが多くありますが、アレルギー体質の予防一つ考えられることがあります。
生後3-4カ月頃、ワクチンプログラムが終わったらできるだけ外で遊ばせるのがよいのではないかと考えられます。
根拠がまだしかりとしているわけではありませんが、体や手足についた泥や砂などもある程度は残して弱い細菌には目をつぶる(放置する)ことも良いのかも知れません。
エンドトキシンが極端に少ない清潔すぎる環境では、アレルギー体質になりやすのではないかと考えられるようになりました。
最新の情報ですので、今後もっと研究が進めば違う意見もででくるかも知れません。
今はエンドトキシンによるアレルギー体質予防が最新の情報です。
近い将来に、アレルギー体質予防のためのエンドトキシンを用いたワクチンができる日が来るかもしれません。
最新情報のご案内でした。